「ごはんだよ」と声をかけると、ちゃんと器の前までやって来る。ところが食べ進めるうちに足元が落ち着かなくなって、体が左右にゆらゆらしはじめる。器にまだ半分あるのに、ふいっとその場から行ってしまう日もある。
「もう年だから、そんなにお腹が空かないのかな」と思われるかもしれません。気になりますよね。ただ、食べる気はあっても、立ったままでいること自体がしんどくなっている、ということもあるんです。今日は、ごはんの時間のつらさがどこから来るのかと、おうちで見直せる食べる姿勢と場所についてお話しします。
食事中に立っているのがつらくなるのはなぜか
最初に見てほしいのは器の置き場所です。床に置いた器から食べるとき、犬は頭をぐっと低くして、体の重さを前足で受け止めるような格好になります。この格好は、首と前足に負担がかかります。
ここに年齢による変化が重なります。足や首まわりの筋力が落ちてくると、ごはんの間ずっと立っていること自体が負担になることが多いです。踏ん張る力が足りなくなると、食事の最中に足が外側へ滑って広がったり、体がぐらついたりすることもあります。
足元がフローリングだと、なおさら踏ん張りがききにくくなります。滑りやすい床は、ふらつきを強める要因のひとつです。
それから、シニア犬は飲み込む力も弱くなりやすいと言われています。頭を低くした姿勢がつらいと、食べている途中でむせることがあります。
こうした事情が重なると、ごはんのペースが乱れてきます。食べるのを中断したり、器に残したまま行ってしまったりするのは、お腹が空いていないからではなく、立ち続けるのがつらいから、という場合もあります。
食事の様子で見てほしいところ
次のごはんのとき、少し離れたところから眺めてみてください。
- 食事の後半になると、足の幅が食べ始めより広がっていないか
- 体が左右にぐらついたり、後ろ足がつるっと滑ったりしていないか
- 器に口が届くまで、頭をかなり低く下げていないか
- 食べるのを中断する、器に残したまま行ってしまうことが増えていないか
- 食事中にむせる回数が増えていないか
当てはまるものがあれば、「食べ方」より「食べる環境」のほうを見直すきっかけになります。
今日から試せる、食べる姿勢と場所の工夫
器の位置を少し上げてみる
食器台や台になるものを使って器の位置を上げると、首を大きく下げずに済むので、首や前足の負担を減らしやすくなります。
気になるのは「何cmにすればいいのか」ですよね。実は、目安は情報によってばらつきがあります。器の底が肘より少し下にくる高さを挙げているもの、肩の高さを基準に考えるもの、立った姿勢で口の下に器が収まる高さとするもの、とそれぞれ違っていて、決まった正解の数値はありません。
低すぎても高すぎても食べにくくなることがあり、高すぎると飲み込みにくくなる場合もあります。まずは手元にある箱などで高さを変えてみて、立ったまま首を無理に下げずに食べられるところを、その子の様子を見ながら探していくのが現実的だと思います。
立ち方や頭の下がり具合は時間とともに変わっていくので、一度合わせた高さが合わなくなることもあります。ときどき見直してあげてください。
足元に滑り止めを敷く
食事をする場所に滑り止めマットなどを敷くと、踏ん張りやすくなって姿勢が安定しやすくなります。器の下だけでなく、犬が足を置く位置まで覆っておくと安心です。
一度に長く立たせない
食事の時間が長くなると、それだけ老犬の体には負担になります。1日の量を何回かに分けて、一度に長く立っていなくて済むようにする工夫もあります。持病がある子や療法食を食べている子は、回数や量の変え方をかかりつけの獣医師に相談してからにしてください。
支えながら食べてもらう
後ろ足がふらつく場合は、クッションやタオルで体を支えたり、飼い主さんが手を添えたりして、安定した姿勢で食べられるようにする方法もあります。ただ、体の大きな子をずっと支えるのは飼い主さんの腰や肩にもこたえます。続けられる形を探してみてください。
伏せて食べるようになったら
立って食べるのが難しくなり、伏せや横になった姿勢で食べるようになった場合は、上半身を起こして頭の位置を体より高くするのが基本とされています。寝かせたまま食べさせることは避けてください。
ここで気をつけたいのは、「頭を高くする」と「顎を上に向ける」は別だということです。顎だけを上に向けた姿勢で食べさせたり流し込んだりすると、気管に入りやすくなります。介助で食べさせたあとは、20〜30分ほど上半身を起こした姿勢のまま、むせや吐き戻しがないか様子を見るとよいとされています。
早めに獣医師に相談したいとき
次のような様子があるときは、早めにかかりつけの獣医師にご相談ください。
- ふらつきが急に始まった
- 頭が傾いている、目が揺れている(眼振)
- 立てない、歩けない
- ぐったりして食べない
- 食べる量が減った状態が続いている、むせることが増えた
高齢の犬の首の傾きやふらつきの背景には、前庭疾患などが隠れている場合もあります。年齢によるものなのかどうかは、おうちでは判断がつきません。「いつもと違う」と感じたら、その感覚を信じて相談してみてください。
話を聞いてほしいときは
食事のときのちょっとした変化は、毎日そばで見ている飼い主さんだからこそ気づけるものです。私もLINEや電話で、こうした暮らしの中の困りごとを伺っています。同じことで悩んでいる方の参考になればうれしいです。
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※本記事は一般的な情報をまとめたもので、診断や治療を目的としたものではありません。
気になる症状がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
※歩けるくんは治療を目的とした商品ではありません。感じ方には個体差があります。
うちの子の場合はどうだろう、どのサイズが合うのだろう——
そんなふうに迷われたときは、お気軽にご相談ください。
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